昔の事との出逢い方



 今日は、私の誕生日。
 なら、そうですね――
 あの日から、もう一年になるんですね……


 一年前のあの日、私は朝から胸を高鳴らせていました。
 いえ、本当はずっと前から――家兄さまに会えるとわかってから、ずっと、私の胸は落ち着いてはいられなかったんです。
 朝も、夜も。授業中も、休み時間も。食事のときも、絵を描いているときも。
 家兄さまはいつも何時に起きて、何時に就寝されているのか。
 家兄さまは勉強がお好きなのか、休み時間はどうやって過ごされているのか。
 家兄さまはどんな料理が好きで、それで――
 どんな、お顔をされているのか……


 私と家兄さまは幼い頃に離れ離れになってしまい、それ以来ずっと会っていませんでした。
 私が覚えている家兄さまは、いつまでも小さなあの頃のまま……
 だから私は、家兄さまのことを思うたびに、その頃の家兄さま――ふふ、まだわんぱくな子供のようでしたね――をノートやスケッチブックに描いていました。
 そして、想像の中で成長した、今の家兄さまの姿も。
 家兄さまのお姿は、そのときどきで違う印象を持って、絵の中に写されていました。
 時には理知的だったり、時には野性味があったり……
 でも、どの想像の中の家兄さまを描いても、私の心は満足しませんでした。
 それはもちろん、それが本当の家兄さまではないから……


 そして一年前、私は二ヶ月に一度、家兄さまに会えることになりました。
 学校も、家兄さまの住んでいる場所の近くにいけることになり、私の期待は高まるばかりでした。
 でも、すぐに家兄さまに会うことはできませんでした。
 新しい学校や寮での生活になれることもあり、そのうえで家兄さまに会うことは、私の負担になると……
 でも、私は、学校や寮なんてどうでもよかった――
 早く、家兄さまに会いたかった――
 ――今となってはとんでもない願いでしたけど、そのときの私は、それほど切実でした。


 そして一年前の連休のとき――


 学校や寮の生活にも慣れた私は、一人で街を歩いていました。
 連休中で、寮の友達はみんな帰省していたので、一緒に出歩く人もいませんでした。
 お母様からは帰ってくるように言われましたが、せっかくの連休なので、自由に過ごしてみたかったんです。
 でも、それより何よりも、私の期待していたことは――
 誕生日に、家兄さまに会えること……でした。
 やっと待ちに待った『お兄ちゃんの日』。その最初の日が、私の誕生日だったんです。
 それはもう、嬉しくて、嬉しくて――
 できるなら、この街で、家兄さまの住む街で、最初の『お兄ちゃんの日』を過ごしたかったんです。
 もし、家に帰っていたら、お母様やチャンさんがどんなことを言うかわかりませんしね。


 そうして、誕生日を目前にひかえた私は、抑えきれない思いを抱いて、街を歩いていました。
 手にはスケッチブック、バッグには鉛筆を数本と練り消しゴムを入れて。
 もう、世界が光り輝いて見えました。
 まるで、空気の粒一つ一つが、ダイヤモンドに変わったように――

 そのまぶしい空気の中で、私は、あの場所で――


 初めて、恋に落ちました。


 その人を見た途端、他の色がまっさらに消えたのを、よく覚えています。
 それは白で塗りつぶしたのではなく、消しゴムで消したのではなく――そう。
 まるで、その人以外を切り捨てたように、その姿だけが私を支配していました。
 何かしていたのでもなく。
 何か言葉にしたでもなく。
 ただそこにいた人が、私の心臓を高鳴らせました。
 何より強く、誰より強く、私の心を泣かせてしまった人。

 そのとき、私は確信しました。
 だったらいいな、ではなく、に違いない、と。
 あの人が、私の家兄さまだと――


 きっと、誰も信じないでしょう。
 家兄さまも知りません。
 この気持ちは、まだ、誰にも秘密です。


 私たちの始まりは、私の恋の始まりでした――

"the Beginning is the Love is the Beginning"closed.

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